恋文として
遺書をかきたい
好きだとは
ひとことも明らかにせずに
ぼくはさっきまで燃えていた
たばこの火をいつまでも
思い浮かべるようにして
あなたの面影を
すでに目の前からは
消えてしまったものとして
ぼくの視界のなかだけに
投影し
その影を見つめながら
だがしかしぼくは
たばこが舌にしみて
ヒリヒリする
絨毯のうえにあぐらを
かいてギターを弾いていると
父親から電話があった
ぼくがあまり自転車に乗っていないのに
父親は毎日乗っているらしかった
ひとりだひとりだひとりだ
一
人
死んだらみんなと一緒ですか
そうは思いません
ぼくはぼくの書いたものを置いて行く
この世に
だけどぼくは最期に
この世ごと置いて行くのだ
書きものをする意味などあるのだろうか
あなたは
まぼろし
この世はなんだろう
かつて生家のクローゼットに
あったビデオテープのなかの
録画された映画みたいなもの
かな
死んだらどうなるみたいな話は
あまり好きじゃない
さよならしたらさよならじゃないか
だけどでもだがしかしだからゆえに
この世が唯一無二だからこの世が
意味に満ちあふれているということに
素直にうなずけもしない
現実的な現実がぼくの骨身にしみるという
嘘7割本当3割の水割り
まだ
本当?
始まっていない
とするならば
今日のおしまいに
君は嘆いて地団駄踏むか
嘆いて地団駄踏むとき
君の時間は進むのだ
進め目を開いて新しい血を
背中に流して