しずかな夜

国道というかバイパス近くのアパートに住んでいるのだが、こんなにもしずかだったろうかと思う。しずけさは貴重だ。なかなか手に入らないものである。

「いずれぼくは死ぬ。だから焦って死ぬことはない。」

「いずれはぼくは仕事をやめる。だから焦ってやめることはない。」

もちろん焦ってもいいのだと思う。ぼくは軽く焦っている。腰を落ち着けて生活を継続することが逆にぼくを不安にさせる。

書くことは焦りなのかもしれない。

夕方から頭痛がしていた。靴屋に一足修理に出して戻ってくるといよいよひどく、ベッドにもぐりこんだ。目がさめると頭痛はおさまっていた。夕飯を食べるのはやめてお茶だけ飲んだ。台所には朝食で使った洗い物がそのままだ。たしか朝はお腹がいたく、片づけをせずに出かけたのだ。

そのまま寝てしまったほうがよかったのだろうが、机に向かうことにした。ぼくは思った。会社に行き、ほどほどに睡眠をとり、三食欠かさず食べる生活と、会社に行き、夜は書きものをし、たまに食事が飛ぶ生活と、どちらがより幸福なのだろうか。極端な話、健康でなにもしない生活と、多少健康を損ねても自分で決めたことをやりぬく生活と、どちらがイケてるのだろうか。

たたかう人間にもたたかわない人間にも天からの報酬はないと思っている。

それでも、たたかう人間にしか見ることのできない景色があると思っている。ただそう思っている。

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