夕立も来そうなもっさりした夕暮れどき、ぼくはラーメンチェーン店Kに入った。ラーメンと一緒にコーラを注文すると、店員はたずねた。
「タイミングはどうなさいますか」
無職生活も半年をむかえるころ、ぼくは自転車で知り合ったかたの紹介でもって現在の会社に入った。住んでいたアパートから歩いて10分だったから、引っ越さずに済んだ。ぼくは営業部に配属され、半年ほど研修期間を過ごしたあと、営業担当として主に新規獲得を試みていた。
白状すればぼくはちっともガツガツしていなかった。売り上げが達成できないたびに、心の中では青くなっていたが、あまり気にしてないものと見られていた(ような気がする)。正直自分の売っているものにそこまで愛着を感じられなかった。なんでおれがこれを売っているんだろう、と思うこともあった。
また半年経った。ぼくの営業成績はひどいものだったので、上司らと面談を重ねることとなった。もしやる気があるのかと問われたたらぼくは黙り込んだと思う(実際に黙り込んだかもしれない)。異動の希望はあるか、ときかれた。ぼくはホームページ関係がやりたい、と答えた。スキルはあるのかときかれ、ないですと返した。
クビかなぁ、と思った。2、3日経たないうちに、異動していい旨のお達しがあった。ぼくは命拾いした。
それから半年が3回は経った。ぼくは相変わらずあまり仕事のできないやつだろう。ぼくは仕事のできないことを売りにしてきたから。相変わらずぼくはやる気がない。いや、そこになにか超えられない一線があり、越えようとするとぼくは気持ち悪くなり、拒否反応を示すのである。
「それさ、ほんとにほんとにやらなきゃいけないの?おれさ、ほんとはそれ、やりたくないんだよね」
死にたいかときかれたら、それはいつでもイエスだ。だが、それはこれからのことで、これからのことはこれから任せだ。
今、生きてるのか、死んでるのか、生きようと努力しているのか、全力で死んでいるのか、そういったことをぼくは問題にしたい。