風船

おまえ
好きなひとがあるだろう、ちがうか
おれには
おまえが真っ赤な風船をストローで
膨らましているのが見えるよ

おまえは
そのひとに好きだとか
言いたいのかもしれないね
言うのが勝負だと思っていやしないか

そりゃ
おまえには度胸というか図太さがあるから
一輪の花でも渡しながら好きだとかなんだとか
言ってしまうだろうよ
けども
おまえ、もし黙っていたらどうなる
毎朝毎晩、おまえはその赤い風船を
膨らますのか

本当のことを言うよ
おれはおまえのその風船を
針で一思いに割ってやりたいよ
おまえに希望の光が見えるのなら
おれはその目をつぶしてやりたい

おまえはよく
大事なものは捨てなければいけないとか
哲学者ぶっていたね
なにを捨てたんだい
胸に芽生えたちいさな思いすら
捨てられないのかい

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