なにひとつなしえない

土、日、月、火とお休みである。自転車が手に入ったのはよかったが、新車ということ(あちこち調整が必要)、また予備タイヤが準備できていないことから遠出は避けたほうが無難だ。歩いて徒歩旅行の続きをするつもりでいたのだが、先週の傷(足のマメ)がいっこうに治らず、とても長距離歩ける状況ではない。こうなるとなるべく家にこもっているのが得策ということになる。あぁあぁあぁ。部屋にずっといるのは苦手である。

昨日ロードレーサーの納車日だったのだが、乗って20分くらいでさっそくパンクした。チューブラータイヤで、まだ予備を持っていなかったので、そのままお店に引き返し、予備の車輪を借りてそのまま帰宅した。今日の午後からすこしばかり、パンクに気を付けながらそろそろと乗り、その後自転車店に向かい修理の済んだ車輪を受け取ろうとした。店主と話をしているうちに、いつのまにやら雨が降ったらしく、路面は濡れていた。「またパンクするよ。雨上がりはよくないね。特にチューブラーは。」店主のアドバイスに従い、クロスバイクを借りて帰った。チューブラータイヤはたいへんだなぁ。

帰宅して映画のつづきを見ようと思ったら、昼前に全て見終わっていたことに気づいた。『バーダー・マインホフ 理想の果てに』である。ドイツ赤軍の誕生から主要メンバーの死去までを描いた歴史映画だ。わたしはウルリケ・マインホフという女性の人生に興味があったのでこの映画を買い求めて見てみた。そもそも彼女のことを知ったのは、映画『白いリボン』の監督のミヒャエル・ハネケ氏が、インタビューでマインホフに言及していたのがきっかけだ。先日、床屋で話をしながら髪を切ってもらっていたときに、わたしは誤って『白いリボン』の監督はウルリケ・マインホフであると口にし、帰宅してからマインホフはテロリストのほうだったことに調べて気づいたのだった。わたしは急にこの女性に興味が湧き、なにか書籍でも取り寄せようかと思った矢先、2008年にドイツ赤軍に関する映画が出ていたことを知り、ぽちっとDVDを注文したのだった。わたしの感想は、不謹慎かもしれないが「ちょうおもしろい」であり、ドイツ赤軍とはなんだったのか、マインホフはどのようにしてテロリストになったのか、彼女は最期になにを考えていたのか、などの疑問・関心が根を張り始めた。

今年もその終わりが近づく。あまりじたばたしないほうがいいのかもしれない。ここへきてわたしの体も心もやられ気味だ。片思いに油を注いで燃えたぎる詩を書きあげる余裕もない。詩も書けないほどにわたしは枯れている。書いてたまるかと思うと同時に書かないでたまるかとも思う。わたしに同志はいないしこれからもいないと思う。わたしはウイスキーの瓶を抱いて眠ろう。

新しい自転車

館林駅にいる。太田行きの列車がなかなか出発しない。

やっとオーダーしていた自転車が仕上がったと今週のはじめに自転車店から連絡があった。今日の午後取りに行こうと思う。今現在、所有していたロードレーサーを会社の後輩に貸しており、たぶん戻ってこないので、自転車貧民になっていた。が、新しいロードを手にすれば水を得た魚となるだろう。スポーツ自転車が自分の根幹に占める割合は決してすくなくない。

  • 2007 Bianchi 1885カーボンバック購入
  • 2010 Bianchを大学の友人にゆずり、BH G4を購入
  • 2011 Anchor クロスバイク購入
  • 2016 GIOS ピストバイク購入
  • 2017 クロスバイクを友人にゆずる
  • 2018 ピストバイクを知人にゆずる、BHロードを後輩に無期限で貸す

今回でロードは3台目、スポーツバイクとしては5台目となる。自分の欲しいバイクがどういうものかはわかっているつもりだ。欲しいバイクと実際に買うべきバイクにずれがある場合もあるけれど(欲しいバイクは実用的でないこともある)。

今回のロードは、レースでの使用とか、サイクリングでの耐久性とか、一応考えたけれど、自分の趣味を最優先した。ぼくは1991年生まれだが、この前後5年くらいの自転車のデザイン、たたずまいがたまらなく好きなのである。端的には、スチールフレーム、ダブルレバー、ノーマルホイール、チューブラータイヤでの構成である。ブレーキブラケットは黒ではなく白が望ましい。

  • フレーム: サンエス JFFロード
  • ブレーキ: シマノ105
  • 変速機前後: シマノ105
  • リム: アンブロシオ モントリオール
  • 変速レバー: ダイアコンペ 11s対応

ぼくが妥協したのは2点だ。ひとつは、ノーマルステム、もうひとつは、フレームのラグである。これはフレームの仕様なので仕方がない。サンエスのフレームのシート角は72度だが、他社フレームでここまで寝ている角度のものを見つけることができなかった。ヨーロッパのフレームはシートが立っている場合が多い。脚の長さの比率、つまり膝上が長いか膝下が長いかの違いだと思うが。ぼくはお尻から踏みおろすようにペダリングすることが多いので、サドル位置はなるべく後退させたい、つまりシート角はすくなめがいい。スチールフレームの場合、74.0度もしくは74.5度が市場においてはメジャーのようだ。このあたりの好みは、しばらく乗って体感できるものだと思う。

完全に自己満足向けの記述になってしまった。もうすぐクリスマス。彼女はいない。彼氏もいない。自転車はある。ハッピークリスマス!

さむいということしか

あなたにとてもとても
お会いしたいけれど
この間会ったばかりだからと
連絡することがためらわれてしまう

ああ!
とてもとてもお会いしたいのに
ぼくはあなたに会うことができない
なぜ
 なぜ
  なぜ
好き
 好き
  好き
ああ!

年ごとに目標など立てない主義だが
今年の初めに同僚からたずねられ
ぼくは「身投げしないこと」と答えた

今年もその終わりが近づく
ぼくは身投げしたくてたまらない
なんだったのだろうこのいちねんは
あすがいったいなんであろう

生きていることが
楽しくないなんて
悲しい
でも生きていることは
楽しくない

すくいがないことが
すくいなの?
すくいって
なんなの
すくいなんてきっと
ないないない

Ha
ぼくは自分自身にすら希望を与えることができない
ぼくは自分自身にすら答えを与えることができない
死んだらわかることがあるのかもしれない
死んでもわからないことがあるのかもしれない

あなたに会いたい
ぼくにはなんの価値もない
さむいということしか
ぼくにはわからない

夜食

コンビニの軒先で
雨をしのぎながら
たばこに火をつけた
うまい一服
おろかもの

帰ってきてから
レンジでソーセージをあたため
ビールを注いだ
なにを祝っているのやら
火曜日ですぜ
風呂も入っていないのに

いよいよきたなくなった
台所に嫌気がさす
生ゴミうけのそうじを

缶ビール一本で
よれよれだ
きみ
知ってるかい
ぼくは缶ビールだ

知らないでくれ
ぼくの気持ちなんて
冷静に
まあるいグラスに
オレンジジュース

今日もへたくそに
ギターを弾いた
きみの前で弾けたらいいな
と思っている
つかのまの空耳のように

冷蔵庫だよ冷蔵庫

部屋の明かりがやや足りず
突っ立ってコーランを読んでいた

コーヒーの湯気で
鼻の穴をしめらせた
皿を洗うたびに手にしみる

マラルメの詩が読みにくいのは
主語が明らかにされないからだと
思った

「荒木はドMだから」

MかSかは状況による
なにしろぼくはひとりしかいない
ひとり芝居だが役はたくさんあるのだ

明かりがほしい
立ち机がほしい
卓袱台がほしい
もし奇跡が起こるなら
あなたのぬくもりがほしい

次回

なにかあったら
とぼくは言ったが
いったいなにが
あろうというのか
きっとなんにもありゃしない
ぼくがあなたに会いたいという
理由のほかには

今朝について

あまりの寒さに目が覚めました
おなかが冷えました
7時20分でした
今日は起きねばなりません

裸足で台所に立ちました
大きな鍋と小さな鍋でそれぞれ
お湯を沸かしました
そしてお茶を飲みながら
スパゲティを用意しました

お昼に東京で
ひとに会う約束があるのです

日曜日でしたが
食後に新聞を読みました
最近の新聞は
異常なほどに
ドラマチックですが
それは現実が度を越して
過酷になっていることを
示しているのだと思います

カーテンを開けて日を入れ
(とはいえ白い冬の空)
カーペットの上に座りました
再び紅茶を飲みながら
本を読んでいました
昨日からの繰越分が2.5時間あると
机の上のメモは伝えています
掃除、洗濯、もらった野菜を使っての料理、ほかにもやりたいことはあって
×××

このあいだ
飛行機で旅行に発つとき
特に日本に帰らなければいけない
理由もないなと思いました
無事に帰ってきたいと思いながら
無事に帰ってこなければならない
理由もないなと思いました
ぼくはそこで帰国後にひとに会う
約束をしたのです
その約束を時折思い出しながら
ぼくは旅をしました

ぼくは無事帰ってきました
運が良かったのだと思います
ぼくは「かけがえのないもの」
を探しているのではありません

ぼくはぼくに
「なにもないこと」を感じ
またぼくの「大事なもの」
を捨て去る時のひもじさを
感じます

しかしながら、ぼくは
I have nothing
という前向きな表現がすきです

ファミレスJ

「てんちょー、おなかへったー」

バイトの女の子の声が筒抜けである。客はわたしひとり。結城のファミレス。

小山のリサイクルショップでコートでも買おうと、帰宅してからクルマを出した。リサイクルショップで、コートのようなものを購買したあと、調子に乗ってお気に入りのJに来てしまったのだ。玄関は従業員の出入りしかない。ゴールデンタイムだというのに、今日はファミレスを避けるべき理由がなにかあるのだろうか。静かすぎてボタンを押すことすらためらわれる。

パリではジレ・ジョーヌ運動が続いているようだ。ぼくは運がいいといろんなひとから言われた。そうかもしれない。ぼくは呑気なまま日本に戻り、呑気に仕事をしていた。再びどんよりと腰を曲げてバイパス沿いを歩いて通勤した。おれはおれはおれはおれは。評価の関係で上司と面談した。思ったよりよい評価だった。

ケーキでも食べようかな。

スーパーで食材を買って自炊しようとか思いながら、全くせずに外食を繰り返している。ばかである。

外は真っ暗。冬はみんなどこに行ってしまうのだろう。週末にかけて冷え込むと聞いた。部屋のなかでコートでも着よう。寝る前にウイスキーを呑もう。

ねむくなる。読みたい本が増えていくが、ぼくのキャパが追いつかない。今一番熱心に読んでいるのは『コーラン』だ。これはティエリーさんのアドバイスによる。日本語で読んでいるのだが、やはりアラビア語を勉強してオリジナルに挑戦したい。

最近書くことの不可能性について思いをめぐらしている。書くことはぼくの手に余る。書いても書いても意味はない。だが書かなくては書いたことにはならない。詩を書かない者が詩人を名乗る資格はない。資格を重視するのではない。書かなくては書くということが成されない。頭のいいひとほど書く量はすくなくて済むだろう。書くことはばかげたことでもある。ぼくはばかであることは自慢の種にはならないと思っているが、しかしぼくはしょうもない人間なので、同じようなことを何度でも書いてしまうのだ。もっと勉強しろと自分に言い聞かせているが、ぼくの頭のなかみはそうそう簡単に変わらないのである。

ぼくなりの「冬がきた」

うすぐらい部屋で
電気カーペットの上にうずくまって
本を読んでいると
目がしょぼしょぼしてくる
ちゃぶ台とランプでも買おうか

昨夜ぼくは
スマホの画面にキスをしそうになった
べつにスマホの画面にキスがしたかったわけじゃない
画面の向こうに祝福を送りたかったのだ
しかし画面の向こうとはなんなのだ?
言葉のこと、それともあなたのこと

ちょっち
服でも買おうと思い
赤いセーターとハンチング帽を買った
赤いセーターを着て、ハンチングをかぶって
部屋でぽろぽろとギターの練習をした
アルペジオの一音一音が骨にひびいていく

空腹のためか
寒さのためか
頭がいたい
苦行とは
ある種の趣味のようなもので
それ自体を救いとして売り出してはいけない
信仰とは
やさしい気持ちになれるもの
であってほしい

どうやらぼくは
あと一時間は勉強しなければいけないらしいが
とりあえず夕食を摂り、そしてたぶんビールを一杯呑むことにしよう

ぼくは人間であって
天使でも神でも仏でもない
星でも山でも海でもない
人間には人間の全力があるのみである