自信とは
経験のすえに身につくものでは
じつはなく
ただ物事にたちむかうために
だれもがもつことのできる
中身のない武器である
晩酌
ただただ
さびしさばかりが
毒のように
心からこぼれおちて
日曜の夜
わたしのへやを
支配していた
忘恋
わたしは
すきなひとを
忘れることに
思い至った
思いだせば
またすきになってしまうだろうし
思いだせば
かかわらずにはいられないだろう
好意とはナイフのようなものであり
もはやわたしの好意は
あのひとにとってみれば
ナイフでしかありえない
わたしは
すきなひとを
忘れることに
思い至った
わたしは
わたしの好意が
花となることをねがう
修行
なにかを変えるために
心と体を鍛えつづけてきたが
本当は
起こってしまったなにかを
受け入れる力のほうが
大事なのかもしれない
地に落ちて罪を知る
あなたに会えなくなってから
生きた心地もしないが
あなたに会っていたころ
生きた心地のしていた自分は
ただ自分が死んでいることに
気づいてなかっただけかもしれない
逆行
好かれようとするから
ばかなことをして
恥をかくのだ
真剣に嫌われる努力でも
したらいいのだ
関わろうとするのをやめ
関わらないようにすることに
心を向けなければならない
奇妙な年
今年は奇妙な年である
半年をややすぎるまで
浮かれてすごし
今
秋の到来のなか
しずかな絶望におかされており
これをふりはらうことはできない
手紙
わたしは
あなたにむけて
A4 2枚の手紙をかいた
中身をよみかえし
おそろしい気持ちになって
清書するのを断念した
わたしの存在が
あなたにとって
とるにたりないものであるとき
わたしが
わたしのことばかり
紙の上にうつしたとて
それがなんになろう
タイミング
あなたは
きっともう今日は来ないだろう
とわたしが思ったときに
どこからとなく現れる
リング
リングにあがり
なぐられようと
なぐられまいと
いずれも恥ではない
しかしリングに
あがらないのは
恥であると信じる