なぜだかわからないが
あたまのなかみがすこしずつ
こぼれていく
なぜだかわからないが
自分だけが世の中から
とりのこされて
終わっていく
そんな気がする
妄想鍛錬
世間話もほどほどに
ぼくをだきしめてくれないか
だって冬は
とてもとてもさむいから
冬
まっくらな風呂場で
プラスチックのいすに座り
たばこの先の
ほのおをみつめる
代償
タイムマシーンに乗るたびに
より遠くの未来にとばされてしまう男にも似て
わたしは
ハードなサイクリングに出かけるたびに
より高次の疲労を負って帰宅する
たわごと
昔の恋愛のダメージから抜け出すには
新しい恋愛をはじめるしかないのだと
思っていた
ようやくぼくは気づいたのだが
昔の恋愛のダメージから抜け出すために
新しい恋愛をはじめる必要などない
昔の恋愛のダメージから抜け出すには
ただ
男のすべてをかければよいのだ
復活
今夜わたしは薬をのむのをやめ
お湯を沸かし
それでウイスキーを割って呑んだ
預言者
預言者はいつも
サンダルを履いている
ぼくは預言者ではないが
預言者への敬意とあこがれをもって
今日もサンダルを履こう
過度の一般化、あるいは観察
男は
女を好きになる前か
女に好かれている時が
華であり
女を好きになるやいなや
女にとって招かれざる客となる
恋愛の失敗
恋愛の失敗を思い出しながらも
新しい朝は訪れ
わたしは今
いや自転車だ、自転車なんだ
と自分に言い聞かせながら
まだ陽ものぼらぬうち
孤独な練習に出かけるのであった
修行ごっこ
いかなる修行も
修行ごっこから
はじまるのなら
修行ごっこといえど
修行の一部にほかならない