なにかあったら
とぼくは言ったが
いったいなにが
あろうというのか
きっとなんにもありゃしない
ぼくがあなたに会いたいという
理由のほかには
今朝について
あまりの寒さに目が覚めました
おなかが冷えました
7時20分でした
今日は起きねばなりません
裸足で台所に立ちました
大きな鍋と小さな鍋でそれぞれ
お湯を沸かしました
そしてお茶を飲みながら
スパゲティを用意しました
お昼に東京で
ひとに会う約束があるのです
日曜日でしたが
食後に新聞を読みました
最近の新聞は
異常なほどに
ドラマチックですが
それは現実が度を越して
過酷になっていることを
示しているのだと思います
カーテンを開けて日を入れ
(とはいえ白い冬の空)
カーペットの上に座りました
再び紅茶を飲みながら
本を読んでいました
昨日からの繰越分が2.5時間あると
机の上のメモは伝えています
掃除、洗濯、もらった野菜を使っての料理、ほかにもやりたいことはあって
×××
このあいだ
飛行機で旅行に発つとき
特に日本に帰らなければいけない
理由もないなと思いました
無事に帰ってきたいと思いながら
無事に帰ってこなければならない
理由もないなと思いました
ぼくはそこで帰国後にひとに会う
約束をしたのです
その約束を時折思い出しながら
ぼくは旅をしました
ぼくは無事帰ってきました
運が良かったのだと思います
ぼくは「かけがえのないもの」
を探しているのではありません
ぼくはぼくに
「なにもないこと」を感じ
またぼくの「大事なもの」
を捨て去る時のひもじさを
感じます
しかしながら、ぼくは
I have nothing
という前向きな表現がすきです
ファミレスJ
「てんちょー、おなかへったー」
バイトの女の子の声が筒抜けである。客はわたしひとり。結城のファミレス。
小山のリサイクルショップでコートでも買おうと、帰宅してからクルマを出した。リサイクルショップで、コートのようなものを購買したあと、調子に乗ってお気に入りのJに来てしまったのだ。玄関は従業員の出入りしかない。ゴールデンタイムだというのに、今日はファミレスを避けるべき理由がなにかあるのだろうか。静かすぎてボタンを押すことすらためらわれる。
パリではジレ・ジョーヌ運動が続いているようだ。ぼくは運がいいといろんなひとから言われた。そうかもしれない。ぼくは呑気なまま日本に戻り、呑気に仕事をしていた。再びどんよりと腰を曲げてバイパス沿いを歩いて通勤した。おれはおれはおれはおれは。評価の関係で上司と面談した。思ったよりよい評価だった。
ケーキでも食べようかな。
スーパーで食材を買って自炊しようとか思いながら、全くせずに外食を繰り返している。ばかである。
外は真っ暗。冬はみんなどこに行ってしまうのだろう。週末にかけて冷え込むと聞いた。部屋のなかでコートでも着よう。寝る前にウイスキーを呑もう。
ねむくなる。読みたい本が増えていくが、ぼくのキャパが追いつかない。今一番熱心に読んでいるのは『コーラン』だ。これはティエリーさんのアドバイスによる。日本語で読んでいるのだが、やはりアラビア語を勉強してオリジナルに挑戦したい。
最近書くことの不可能性について思いをめぐらしている。書くことはぼくの手に余る。書いても書いても意味はない。だが書かなくては書いたことにはならない。詩を書かない者が詩人を名乗る資格はない。資格を重視するのではない。書かなくては書くということが成されない。頭のいいひとほど書く量はすくなくて済むだろう。書くことはばかげたことでもある。ぼくはばかであることは自慢の種にはならないと思っているが、しかしぼくはしょうもない人間なので、同じようなことを何度でも書いてしまうのだ。もっと勉強しろと自分に言い聞かせているが、ぼくの頭のなかみはそうそう簡単に変わらないのである。
ぼくなりの「冬がきた」
うすぐらい部屋で
電気カーペットの上にうずくまって
本を読んでいると
目がしょぼしょぼしてくる
ちゃぶ台とランプでも買おうか
昨夜ぼくは
スマホの画面にキスをしそうになった
べつにスマホの画面にキスがしたかったわけじゃない
画面の向こうに祝福を送りたかったのだ
しかし画面の向こうとはなんなのだ?
言葉のこと、それともあなたのこと
ちょっち
服でも買おうと思い
赤いセーターとハンチング帽を買った
赤いセーターを着て、ハンチングをかぶって
部屋でぽろぽろとギターの練習をした
アルペジオの一音一音が骨にひびいていく
空腹のためか
寒さのためか
頭がいたい
苦行とは
ある種の趣味のようなもので
それ自体を救いとして売り出してはいけない
信仰とは
やさしい気持ちになれるもの
であってほしい
どうやらぼくは
あと一時間は勉強しなければいけないらしいが
とりあえず夕食を摂り、そしてたぶんビールを一杯呑むことにしよう
ぼくは人間であって
天使でも神でも仏でもない
星でも山でも海でもない
人間には人間の全力があるのみである